悉皆成仏
この仕事を始めた頃、お預かりしたご法衣を洗いに出したり、染み抜きしたり染めたり仕立て直したり、、、、京都中を走り回って引き受けて頂ける職人さんを探し回りました。
そのうち、「悉皆屋さん」という言葉を初めて聞きました。
京都では呉服の染め織り、シミ抜きや生地の手配など全般に取りしきる人の事そう呼ぶのだそうです。
そんな便利な人がいるのなら是非教えて欲しいと頼みましたら、「貴方がしていることなのであんたが悉皆屋さん」と言われてがっかりしました。
それでも、伏見で仕事をされている「悉皆屋さん」の方を紹介頂きました。
聞くと、その方の実のお父様が「京洗い(着物の丸洗い)」を初めて事業化されたとのことでした。
法衣のことは解らないけどと言いながら、たくさんのことを教えて頂きました。
残念ながら、はじめて合ってから2年ほどたったある日突然50才過ぎの若さでなくなられました。
その後、奥様からもご紹介頂いた職人さん達とも今もおつきあいをさせて頂いていますが、私を含めて皆さん年を重ねてきました。
80才を超えてご活躍の職人さんもいますが、皆60を超えた方ばかりになってきました。
弊社の工房にも70才を超えたものが4名現役で頑張っていますが、京都中走り回って探した「名工達」も皆高齢になってしまいました。
どの世界も「後継者問題」は深刻な問題です。
私どもの仕事は、1200年の歴史と伝統に支えられた、この「名工達」の技が在ってのビジネスです。
これまで支えて頂いたこの「伝統産業(職人)」と手を取り合って守っていかなければならないと考えています。
職人さん達は皆、口を揃えて「先達が守り続け、教えて頂いたこれらの技術を次の世代に引き継がせたい。教えたい。」と語ってくれます。
時折、歴史のある大手の企業様から「補修」の依頼があります。
生産を海外に移したため、代々支えてきた職人さん達も離れてしまったそうです。
日本で使われるものが、日本で造れない。
日本で造ったものが、日本で直せない。
若い人達が夢と誇りを持てる「良い仕事」「良い品質」「高い技術」は、私たち商売をする者、造り出す職人達、それを理解し育てようとする顧客様の意識が、必要なのではないでしょうか。
私どもの出来ることは少ないかもしれませんが、今周りにいる仲間達と共に良い仕事をすることで、全てのこと(悉皆)が少しづづ良くなっていくと信じています。
西谷 謙二
2009年06月07日(日) | 職人の技と想い
