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■神戸新聞 平成12年2月18日 君の手で寺の宝に新しい命 |
高座や仏壇を飾る打敷として大切に伝承されながらも、古くなって使えなくなった寺院の「打敷(うちしき)」刺しゅうを修復する京都市の工房が、後継者育成を目指して希望者を募っている。工房に持ち込まれるのは市井の寺院の逸品ばかりで、鳳凰(ほうおう)や竜などの図柄が肉厚の刺しゅうで表現されている。「昔の職人が技術と情熱を注いだ作品を現代によみがえらせる仕事。ぜひ伝統の世界に触れ、技術を学んでほしい」と工房代表者は呼びかけている。
この工房は、同市伏見区竹田藁屋町の京都刺繍修復工房(西谷謙二代表)で、法衣やけさの染み抜きなどを請け負う会社が、昨年末に開いた。
西谷代表が寺院を訪ねるうち、住職から「素晴らしい打敷があるが古くて使えず残念だ」との声を聞き、「京刺しゅうの職人の協力で修復業を始めてみよう」と、和装業界で働いていた職人に協力を呼びかけた。
現在、工房には5人の職人と3人の内職技術者がおり、退色したり糸切れした糸を一針一針鮮やかな色彩で刺し直したり、真新しい生地に刺しゅうを載せ直す作業に追われている。
兵庫や三重、愛知、北陸地方から注文が多く、文化元(1804)年など、江戸後期の年号が入ったものも。
きもの刺しゅうで25年の経験を持つ弘田和子さんは「昔の職人の針の調子に合わせるのに、最初は苦労した。でも、古い物に命を吹き込むようでやりがいがあります」と話す。大学院を卒業したばかりの若い男性も職人を目指し作業に励んでいる。
西谷代表は「刺しゅう打敷は高価なため、現在は織物が主流。国宝、重文ではないが、それぞれの寺院にとっては先人の思いがこもっている宝物です。技術後継者を育て、二十一世紀に残る仕事をしていきたい」と意気込んでいる。